スパイラルリテイニングリングの特長
やむを得ず、止め輪をJIS規格品の中から選んではいませんか?
スパイラルリテイニングリングは設計者の意図する仕様に合わせて製作することができるので、柔軟な設計に貢献することができます。
- 角が丸い平線材をコイリングするので、プレス成型の止め輪に見られるバリ、ダレ、カエリなどは発生しません。
- 標準品を取り揃えていますが、オーダーメイドの場合でも基本的に新たな金型、治具などを製作する必要がありません。
- 材質は一般的な炭素鋼のほか、さびに強いステンレス鋼もご用意しています。
- C型止め輪にある脱着用の突起が無いので、スペースを無駄にしません。
- 装着時は専用治具のほか、ハンドリングでも可能です。取り外しの際も、マイナスドライバーなどで簡単に行えます。
スパイラルリテイニングリングの設計
スラスト荷重の算出
リングの許容スラスト荷重は下記の式で算出ができます。
Ps=(D・T・Ss・π)/K |
---|
Ps:許容スラスト荷重(N) |
D:軸径または穴径(mm) |
T:リング厚さ(mm) |
Ss:素材の剪断力(MPa) |
K:安全係数(静荷重・3 動荷重・5 衝撃荷重・12) |
組付け時の応力の算出
リングを軸や穴に組み込む際の応力は下記の式で算出ができます。
設計の際はこの応力を素材の降伏点以下とすることが望ましいです。
穴用 S=(C・E・H)/[Dn・(1-C)] |
軸用 S=(C・E・H)/[Dn・(1+C)] |
S:組付け時の応力(MPa) |
Dn:リングの中心径(mm) |
C:リングの最大径または最少径と穴または軸との変化率 |
E:ヤング率(MPa) |
H:リング幅(mm) |
腐食に強く、磁性が低いSUS316製スパイラルリテイニングリング

腐食が懸念される環境下で止め輪を使用する際、ステンレスを選択する場合が多いですが、JIS規格では大方がSUS304です。しかし長時間水分に触れる状態や、塩分濃度が高い環境下で使用すると、SUS304では腐食が進行し、止め輪の機能が損なわれる恐れがあります。 そ の様な劣悪な環境下でも、止め輪の機能が損なわれないよう当社ではSUS316を用意しております。SUS316はSUS304にMoを添加することにより、緻密な不動態皮膜が形成され、優れた耐食性を発揮します。高い耐食性を要求されるポンプのメカニカルシールや締結部品などに当社のSUS316製スパイラルリテイニングリングが採用され、高い評価をいただいております。
またSUS316は他のステンレス鋼に比較して、各種溶液への耐食性も優れています。オーステナイト系ステンレス鋼は面心立方晶構造であり、溶液化処理状態では非磁性ですが、冷間加工を加えると磁性が発生します。これはオーステナイト組織の一部が加工誘起マルテンサイト系に変態するためです。よって強度を上げるために、伸延、圧延をしたり、止め輪を成形するなど塑性加工をすると、弱帯磁性となり磁石反応を示します。鋼による組織変態の度合は含有元素の多少に影響されます。ステンレス鋼の代表種であるSUS304では、Ni量に応じてマルテンサイト変態が生じやすく透磁性が大きくなるため、顕著な磁石反応を示しますが、SUS316はマルテンサイトに変態しにくく冷間加工の影響をあまり受けません。従って弱電機器などで非磁性の止め輪が必要とされる場合は、SUS316製スパイラルリテイニングリングの採用をご検討ください。
スパイラルリテイニングリングの脱着
スパイラルリテイニングリングの脱着方法

リングを組み付ける際は、特別な工具を使うことなく、手組が可能です。また、作業効率を上げるため専用治具を使用することも可能です。取り外しの際はノッチにマイナスドライバーなどの先端をかけて、溝からリングの端を引き上げて外してください。
スパイラルリテイニングリング ラインナップ
軽荷重用リング
1巻きのリングでスラスト荷重の低い場合に使用します。
中荷重用リング
2巻きのリングで、軽荷重用リングのおよそ2倍のスラスト荷重に耐えることができます。
重荷重用リング
高いスラスト荷重に耐えることができるように、中荷重用リングより太い素材を使用したリングです。